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Posted by だてBLOG運営事務局 at

2015年03月28日

番外編 マッサン最終回に寄せて


マッサン、いよいよ最終回

そこで今夜はこの二本。

初号スーパーニッカ復刻版と初号ハイニッカ復刻版
でマッサンのウィスキーへ込めた魂に触れてみようと思う。

やはりウィスキーはストレートがいい
ストレートでチビチビと時間をかけて香りと味わいに心から浸るのがいい。

とか言いながらも水をくわえたりもするが、そこは元 蔵元、やっぱりストレートが好きだ。
(マッサンこと竹鶴氏もストレートを好んでだとか・・・・)

理由はこうだ

日本酒の場合、仕込みの際に地下水を加えるが、その地下水は一度全てお米に吸収され、長期低温発酵の経過とともに再び外に溶け出す、というプロセスを経て甘美なる液体となる。

そして蔵元は米から滲み出た液体の尊さと美しさ、品格を魂で愛でる。

だからこそ後から取って付けたような"水割り"は、原酒のもつ液体としての一体感とその美しさに相容れない別の水のテクスチャーの存在を認め、許容することとなり、私なりのテイスティングの美学から大きく反することとなる。

これは元 酒の造り手側として、そして日本酒で"酒道"を極めたという矜持ゆえのこだわりからかもしれないが、ある意味たいへん偏屈で損な性とも言える。

ウンチクはさておき、

今宵はマッサンとリタ、二人の人生のアドベンチャー、そしてリタの純粋で大きな母性愛に敬意を表し、

献杯!


そして最後に、日本ウィスキーの父を支え続けたリタの心="利他の心"に乾杯。  

2014年12月29日

蔵元ブログ終了のお知らせ

ー蔵元ブログ終了のお知らせー

今回で蔵元ブログを終了させていただきます。

全5回シリーズ「未来への提言」は3回を残しておりますが、心境の変化で筆を置くことにしました。

私個人的には日本酒業界には一切の未練はありません。

8月末の決算後の株主総会=伊澤家の決定から、関係者へかけてしまうであろう多大なるご迷惑を最小限に食い止めるよう、いち早く全てのプロジェクトに急停止をかけるよう動き回っておりました。

そうして11月末を以って、酒質設計、マーケティング、PR戦略などの視界(深さと広さ)と将来へのヴィジョンの相違により勝山酒造を退社しなければならない次第となり、仙台を出ることを決意しました。

現在に至るこの短期間の間で私の環境と心境は激変しました。

今後の私の活動の一切には仙台伊澤家も勝山館ならびに勝山酒造とも一切の関係がない、あくまでも治平個人的な活動であることを予めご報告しておきます。


いままで応援していただいた皆様には心より感謝しております。

皆様、5年という長いようで短い期間ではございましたが、本当にありがとうございました。

共に新しい希望に満ち溢れた新年を迎えましょう!

それではよいお年をお迎えください。

深謝。  

Posted by 勝山 at 00:18Comments(3)ご挨拶未来への提言

2014年11月11日

5回シリーズ未来への提言 第二回 長期熟成酒で未来を切り開け!

第五回シリーズ 未来への提言
第二回 長期熟成酒で未来を切り開け!

さて皆さん、「長期熟成酒」って聞いてピンと来ますか?

なんで長期熟成をさせるのだろう?そもそも日本酒は1年以内で消費するものではないのか?ーなんてまさか本当にそう思っていないですか?

また一方で長期熟成酒とはすなわち、売れ残った酒=いわゆる在庫品を蔵から出してきて、別のラベルを付けて高く売っている?なんて思っていませんか?

さらに言うと、長期熟成酒なんで香りがキツくて美味しくない!なんて思っているんじゃないですか?

実はかくいう私も、上記のように長期熟成酒は香りが悪い、美味しくない、在庫品だと2008年酒造業界に入りたての頃はそう思っておりました。

ある人との出会いまでは・・・・・

上野伸弘(うえの のぶひろ)氏。
元トゥールダルジャンのシェフバーマンとしての10年の経験の後、長期熟成酒を広めようと日本酒業界へ転身、品川高輪口に長期熟成酒バー「酒茶論」をオープン。最近では伊豆の町おこしを絡めた”海中熟成酒"で多くの注目を集めております。

まず上野さんがプロデュースした古酒シリーズ「AFS」を飲ませていただき、続いて20年もの味醂に生クリームを表面に滑らせて乗せたシンプルなカクテルを戴いた。

ちょうどSweet Rich-Body「元」の試作をしたばかりのタイミングだったので、酒質設計的にみて上野さんのプレゼンに非常に興奮を覚えました。

AFSと味醂は早速購入させていただき、アミノ酸度、日本酒度(甘辛度/ボディー感の目安)、酸度、グルコース(甘み)、アルコール度、そして官能テスト等を行い、大体の酒質設計概要を社内で調べ上げました。

その時わかったのは、日本酒において良好な長期熟成をもたらすための基準があるということ。一つは酸度。酸度は4.5度は最低必要であるということ。
二つ目は適度な濃度=糖度が必要という事。
また高品質の長期熟成酒を作り上げる大切なこととして1)丁寧な造りできれいな酒質に作り上げる事。そして2)発酵プロセスで酵母が動きすぎて雑味の原因となる余計なアミノ酸だ出さない事と3)酵母の死臭もNGであることが判明した。

つまり、長期熟成酒たらしめんとする為の長期熟成酒専用のレシピと醸造プロセスがある!ということが導き出されたのでした。

つまりそれは私自身、いままで長期熟成酒への『誤解』があったということに目覚めました。

ー上野氏はトゥールダルジャン時代、フランス人シェフへ日本酒を認めさせようと試行錯誤を繰り返し、最終的に長期熟成酒に辿り着いたという。

そして長期熟成酒には、フランス人を恍惚とさせる不思議な力がある事に気づく。

上野氏はそこで一念発起し、長期熟成酒を世に広めようと、自分の目に適った長期熟成酒のみをセレクトした専門のバーをオープンする。
※詳しくは酒茶論へいって直接ご本人から、その熱すぎる歴史と道のりを聴いてください。

長期熟成酒と言っても、いい熟成を経た希有な長期熟成酒と、そもそも長期熟成酒にふさわしくない酒がある。
そもそも長期熟成酒にふさわしくない酒は、そもそも商品として長期熟成前に問題がある。
いい熟成を経た希有な長期熟成酒には、それなりにいい熟成と傑出した熟成があり、どちらにしても熟成に入る前の酒のポテンシャルがその質と格を決める。
本質的な事を言えば、通常の日本酒を長期熟成酒に仕立てるのではなく、長期熟成酒専用にレシピと醸造プロセスから見直し、長期熟成用に特別に酒を醸すということになります。

現に上野氏プロデュースの「AFS」シリーズは、一般の日本酒では考えられない“20年以上”も常温にて長期熟成させることが出来るという、脅威のスペックを有する!

つまり上野氏は長期熟成酒自体の商品化を成し遂げたのである!ついでに流通までも1から作り上げたのである!

冒頭に述べた、長期熟成酒って在庫品なのか? 長期熟成酒はその香りと味が悪い?という問いに関していうと、やはり通常の薄っぺらいいわゆる「端麗辛口」では長期熟成酒においてあまり良い結果は出ないと考えます。詳しい理由は後で説明します。

巷ではよく耳にしますが、日本酒マニアがタンスで一升瓶ごと熟成させたとか、ちょくちょく味見をしながら冷蔵庫で数ヶ月熟成させたとか、いろいろマイ熟成があるみたいですが、上野氏や私が目指している長期熟成酒とはそのようなマニア向けのものではなく、れっきとした商品として販売でき、しかも付加価値が高く、そして世界中の美食家を唸らせる、日本人が「世界に国酒あり!」と自慢できる高水準の日本酒であります。

では私の考える長期熟成酒ですが、以下のようなものがあります。

1. 通常の酒(純米系)を長期熟成酒にする場合
基本的に純米酒はアルコールを添加していない分、酒質が壊れやすいという前提があります。
そのために選ぶのは精米歩合云々というよりも酒質のキレイさとまとまりの良さ。
そしてそれを長期(長期の定義も様々ですが、とりあえず2年以上としましょうか)保存するのですが、ここで分岐点があります。
1-1) 10度から3度の低温での保存と1-2) 0度前後の温度帯、1-3)マイナス3度〜マイナス5度の氷温貯蔵。
上記の温度帯の違いの分岐点で確実に言える事は、蔵元の造った味をレスペクトするか、それとも自分の好みに変えるか、に分岐するという事です。

もし蔵元の味を取るのであれば間違いなく選択は1-3)の氷温貯蔵です。自分の好みを優先するならば1-1)もしくは1-2)となるでしょう。ただ断っておきますが、お酒は嗜好品ですのでいろいろと試行錯誤しながら楽しんだ方がいいに決まっています。そういう私もいろいろと試行錯誤を繰り返してきました。

長期熟成からは離れますが、こんな実験もしました。ある搾り立ての新酒を生のまま-3度、0度、5度、10度、20度の温度帯でそれぞれ3ヶ月間置いておきました。いわゆる「生熟成」(にしてはさすがに20度は高温すぎますが・・・)というものです。

すでに上記の1-1)〜1-3)での試験を行っていたので、大体の勘というか直感でどのようなものが仕上がるかは予想は出来ました。が、予想以上にそれぞれが良い出来に仕上がりました。たぶんこれを行う事で、長期熟成を行うにあたり、通常の瓶火入れしてから長期保存させたものよりも最低でも6ヶ月、もしくは1年くらい時間を稼ぐことが出来たようです。
ただし、この搾りたて生酒での熟成は結構トリッキーで、ものによっては2年すぎた辺りから熟成の良さが滞ってしまうことがありますので注意が必要です。

2. 通常のアル添酒を長期熟成酒にする場合。
ものにもよりますが、常温での熟成か、冷蔵庫の熟成と大きく二つに分かれます。
そもそも劣化しやすい純米酒系よりも大雑把な分け方となるのは、アル添酒には長期保存できるだけの醸造用アルコールという強力な“芯”がしっかり酒質を支えてくれるからです。
当然ですが、常温の方が熟成が早く進むため、色や味の変化が楽しめます。
このアル添酒の長期熟成酒について4.で後述し、ここでは簡単に割愛させていただきます。

3. 長期熟成専用の為の純米酒を造る場合。
現状において、長期熟成酒の為の完成された王道的なレシピはいまだ存在しておりません。
各蔵元や上野氏のような野心的な考えの一部の間で進化しております。
たとえば「貴醸酒」というものがあり、これは比較的長期熟成に向きます。
なぜなら仕込む際に水の代わりにお酒を入れるからです。
通常は仕込み水を全体の70%近くまで入れるのに対し、日本酒を入れます。アル添は醸造用アルコール=連続蒸留されたピュアなアルコールを添加するのに対し、この場合は日本酒を入れます。
また戦国時代の復刻版や江戸時代の復刻版の酒も実は長期熟成に大変向いています。
先に端麗辛口の酒は長期熟成に向かない、という話をしましたが、ここでピンっと来た人はすごいですね。実は『水分』つまり仕込み水の量がポイントとなるのです。
貴醸酒も復刻版のお酒も実は仕込み水の量が少ないんですね。
実は水は劣化が早いのです。
例えばこんな話があります。
15世紀半ばから始まった大航海時代、長期の船旅に水はすぐに腐ってしまったため、船には酒が積まれました。ポルトガルのポートワインやスペインのシェリー酒などの酒精強化ワインーワインにブランデーを添加しアルコール度をあげて長期間の船旅に耐えられるよう開発されました。
つまり、水そのものは非常に保存に弱いという事になります。
つまりなぜ端麗辛口は難しいかというと1)水分量が多い。2)味が薄すぎる=糖分が少ない。3)酸味も少ないの3つの主な理由があります。

つまり1)劣化しやすい水分量がおおい。2)味が薄いので水の影響が受けやすい。極端な例ですがとても甘い蜂蜜は常温で持ちますよね。非常に濃く高い糖度は劣化を防ぎます。3)ワインでも同様、酸度が高くないと長期熟成できないのは世界の常識。

そこで貴醸酒と復古酒ですが、共に1)劣化しやすい仕込み水の水分量が通常の酒に比べ少ない。2)味が濃い=糖度が高い。3)酸味が通常よりも高い傾向を示す。という共通点があります。

だんだん見えてきましたね、長期熟成酒専用酒のイメージが!

貴醸酒や復古酒の他にも仕込みの中で通常の三段仕込みから四段、五段仕込みと仕込みの数を増やす事によって相対的に水分量を減らし、糖度を上げていくという作り方もありますし、全糀(こうじ)造りというのもあります。

そしてこのように現在では長期熟成酒専用酒を、しかも常温で10年以上も健全に熟成可能なお酒が既に商品化されております。
個人的な意見としてはそのように造ったお酒は日本酒度(甘辛やボディー感の一つの指標)がマイナス80度からマイナス116度(完全飽和状態)に達し、実際の保存方法としては10年のスパンでみるならば赤ワイン専用の15〜17度くらいのワインセラーでの熟成が確実でおすすめで、これは発酵時の最高温度帯近くとなります。また10年以上20年であれば白ワインセラー専用セラーで12度〜14度と酒の発酵温度帯の中間あたりでの保存が確実でおすすめです。
またワインと張り合う意味で30年オーバーでしっかり長期で成熟・熟成し、美しいまとまりとそのお酒の本来のフレッシュな良さを追求するのであれば0度以下の氷温貯蔵でしょう。

また一方で、こちらは完全にお遊びですが、数ヶ月高温に晒してから(温泉やサウナ、ボイラー室等の高温に放置しておくというもの。ただし日光に晒すはNG)、次に常温、ワインセラー、氷温貯蔵する、という一種のランシオ(RANCIO)香(一種の高温により醸成される香りの意)をつける、という手段もあります。

ここで一旦、長期熟成に置ける保存温度帯についてのおさらいです。
1)常温:
日本酒の発酵温度帯より上です。ちゃんと酒と保管場所を選ばないと劣化熟成に陥る確率が高いです。そのため常温熟成の場合、開封時期によって当たり外れが多いようで、開けるタイミングによって酒質が大きくプラスとマイナスに触れる傾向があります。
ここで考えられるのが、仕込み水の水分の劣化しやすいという問題にはじまり、好ましくないアミノ酸が酒質に影響する場合や酵母の死臭の影響、カプロン酸等の香り成分の劣化による悪影響等々、酒があらゆる劣化要因によってマイナス影響を受けたりします。
ところが一方でアミノ酸の旨味成分が非常に好ましい状態で表面に出て、アミノ酸の旨味単体もしくは酸との相乗効果によりプラス影響を与えたり、シェリー酒やポートワイン、または極上の紹興酒を連想させるような化学的変化が良い結果を引き出す場合もあり、飲むタイミングにより非常にトリッキーな熟成と言えます。

2)ワインセラーの温度帯:
日本酒の発酵温度の中間から最高温度帯ですので、ゆるやかな時の中でわかりやすい熟成の変化が期待できます。

3)冷蔵庫の温度帯:
いわゆる10度以下の状態です。発酵温度帯としては後半の味と香りをまとめる仕上げる大切な温度帯ですので、かなり安定した状態での熟成を期待できます。

4)氷温貯蔵:
0度からマイナス5度の温度帯です。マイナス5度ともなると熟成というよりは成熟していくと言った方がニュアンスとして合っている思われるほど、非常にゆっくりです。
日本酒は瓶詰めし、火入れ後3ヶ月で酒質が安定した状態でその品質と品格が決定します。そしてこの氷温貯蔵ではその品質と品格を、いわば造り手の蔵元が狙った味わいをレスペクトし維持しつつ成熟させる事が可能です。

最後に精米歩合についても言及します。
長期熟成の場合、高精白米、たとえば8%や23%、そしてよくある35%などはそもそも長期熟成酒としては平凡な酒となることでしょう。そもそも長期熟成酒は早呑みの通常の酒では味わい得ない味の複雑さや深さを楽しむものです。そういう意味では高精白米の酒はそもそもキレイすぎて複雑性と深さへの化学変化が起こりにくい酒質と言えます。そして保存温度帯も4)氷温貯蔵を基本とし、3)冷蔵庫の温度帯ですこし遊ぶしかないでしょう。
ところが精米50%以上のお米の場合は味の複雑性と深さにおいて、長期熟成酒の意義を見いだす事が出来る酒となるでしょう。ただしものにもよりますが、精米70%〜80%でまとまりの悪い雑味の多いヘタな酒で長期熟成すると付加価値は低いものとなりますのでオススメはしません。
せっかく熟成させるのですから、付加価値が増さないと商品的にも飲んだ時にも時間がかかっているばかりにガッカリさせられる事になるかもしれません。

4. 長期熟成用のアル添酒を造る場合
これは将来に向けての大きな提案です。よって通常のアル添酒の定義ではありません。
敢えてチャレンジングに言うと『フォーティファイド・サケ』。
つまり“酒精強化日本酒”という全く新しいカテゴリーです。
近年アル添には正直追い風は吹いておりません。私なんかアル添する意義すらも、ここ数年の純米酒技術の著しい向上の陰ではもやは見いだせません。アル添はこのまま衰退の一途を辿るのでしょうか?
そこで私が提案したいのが『フォーティファイド・サケ』。名前もなんかカッコいいでしょ?
この“酒精強化”というカテゴリーは世界の共通語です。
一方”アル添“は世界へは混乱しか引き起こしません。日本お得意の「ガラパゴス化」です。
“アル添”というネガティブなイメージを払拭し、一気に世界の共通のメジャーなステージアップを目指すのです!
そこで私が考えるフォーティファイド・サケとは、もちろん常温での流通、保存が前提です。
高品質でありながら蔵から出て、日本国内をトラックで駆け巡って、船に乗って海外に行って、外国でも常温倉庫保存で、常温のトラックで駆け巡って、外国の店先やバーやレストランでも常温で保存。バーではストレートはもちろん、ロックでもカクテルでもOK。レストランでは抜栓前に氷水で冷やしてからサーブされるので酒精強化にも関わらず、食前のアペリティフ、食中、食後のディジェスティフにも供されるまさに万能酒ぶりを発揮する云々ーという代物です。
アルコール度数は17度から22度。
誰でも飲みやすいと思えるようアタックに甘いニュアンスが楽しめる一方で、十分なボディーのボリュームを確保しながらアルコールの高さを利用してキレとアフターテイストの長さを実現する。
非常にエキス分も濃く、長期熟成における味の複雑性と深さを十二分に堪能することができる。
仕込みにおいては仕込み水が非常に少ない江戸時代のレシピを採用し、精米歩合は80%〜50%といったところ。日本酒度はマイナス35度からマイナス110度と幅の広い設定により幾通りかのボディーの違いを表現することも世界を狙うならば当然用意するでしょう。

フォーティファイド・サケの保存温度帯は基本、常温となります。
ただし酒の出来にもよりますが、常温保存と言っておきながら、日本酒度がマイナス35度に近くなればなるほど赤ワインセラーの温度帯から白ワインセラーの温度帯、更には冷蔵庫の温度帯での保存が求められる場合も出てくることになるかもしれません。

造り手として、自分の酒が世界中どこに行っても自分が期待する、もしくは自分自身確信する味わいを発揮してもらいたい。そしてその自分の考える美味しい酒質を世界中の人々と共有したい。
フォーティファイド・サケは流通や売り手を選ばない酒なので、現在の純米酒系が抱えている問題が一気に解決されるとともに、造り手の理想が実現できるひとつの手段であると私は考えています。

5. マルチヴィンテージ-ブレンディド・サケを造る場合。
マルチヴィンテージ-ブレンディド・サケとは私の最後の芸術作品である”THE BRAVE SMOKER”(リリース済)と”CHINESE PHENIX”(香港にて試験用に製造)で登場した新しいコンセプトです。
基本的にはマルチヴィンテージ、つまり仕込みと年代の違う古酒(時には新酒も混ぜる)同士をブレンドし、狙った酒質を実現する、というもの。ワイン関係者には問題なく受け入れられるものです。
具体的は作業としては狙った味わいの酒質通りにブレンドし、ブレンド後に即瓶詰めを行い、即瓶火入れをし、即氷温貯蔵し品質を安定させてから出荷する、というもの。

ブレンドはそのコンセプトや最終消費のシーンに合わせてブレンドが行われます。
例えばTHE BRAVE SMOKERは高級ハバナ産シガー用に合わせてのスペシャルブレンド。
ハバナシガーを日本酒に例えるなら付加価値の高いハレのシーン用の長期熟成純米酒。
タバコはアル添酒、とくに本醸造や普通酒と言った安物の日常消費用。
なぜならハバナシガーの葉っぱ一枚づつ注意深く収穫し、数年発酵熟成された後、一番キレイなラッパー専用のキレイで高級な葉っぱで巻かれる。100%天然葉っぱである。
一方、タバコのようにどこの葉っぱかわからない葉っぱを工業的にザクザク刻んであったり、燃焼材が使われていたり、工業的フィルターが装着され、しっかり紙で巻かれていたりと、工業製品そのものである。
天然素材100%のキューバが世界に誇る紳士のアッパーな嗜みであるシガーのシーンに似合うダンディー伊達な日本酒をクリエイトするのがTHE BRAVE SMOKERの使命。
そのため高級ハバナシガーの中間から後半にかかてのスパイシーな味わいを味覚としてフォローできるよう、高貴かつ芳醇、美しさと複雑さ、第一印象のインパクトと味わいの深みを追求したブレンドを目指すこととなりました。
味わいのベースは2種類の3年ものによる強固でかつ複雑な甘みの土台を構築。その上にスモーキーなアクセントとしての6年もの古酒を据え、ただし全体の味わいの印象が長期熟成酒にみられる劣化熟成が現れないよう、対極に新酒を据え、劣化熟成が表面に現れず、逆に古酒の複雑で懐の深い味わいだけが強調されるよう非常に神経を使う微妙なブレンドを施しました。
THE BREVE SMOKERは国境を越えてハバナシガー関係者に大歓迎されました。

また中華料理専用に開発された“CHINESE PHENIX - 鳳/FENG”は、広東料理の名物料理である干し鮑料理やXO醤やオイスターソースを使用した旨味が豊富な数々の料理の口内調理前提の仕様とし、22年物古酒を使いながらも劣化熟成をまったく感じずにスイスイと飲み続けられるよう3年、2年、1年物と合計5種類の別々の仕込みの酒をブレンドし、日本酒度もマイナス40度に設定しました。そのため基本的には冷蔵庫、もしくは白ワインセラーでの保存用となりました。

“CHINESE PHENIX - 凰/WONG”では、北京ダックや上海蟹名物で紹興酒に蟹を漬け込んだ“酔っぱらい蟹”、干しエビ、干しホタテといった干した食材を多用した味が岩複雑なXO醤や濃厚な発酵調味料、濃厚なソースで味付けされたコクのある料理との口内調理用に22年ものと2種類の3年物のブレンドを行いました。日本酒度はマイナス90度と非常に安定した酒質となった為、余裕で常温保管用です。

香港でのミシュラン星付きレストランでの広東料理でのマリアージュにおいて、香港の名だたるワイン専門家やワインラヴァー達に一流高級ワインを押さえて“CHINESE PHENIX”シリーズは大絶賛で迎えられました。

このマルチヴィンテージ-ブレンディド・サケ(M.V.B.S)は造り手、飲み手双方に以下の長所があります。
造り手側;在庫が宝の山に変身!
すごく経営的な理由ですが、造り手にとってはただの在庫だと何にも付加価値がつけられないし、不当に値上げする事には良心の呵責があります。ところがこのM.V.B.S.は、最終目的の為に必要な古酒を選抜し、そして新酒も含め、最終的にパフォーマンスが上がるように仕上げます。
そうする事で在庫品に非常な付加価値をつける事が可能となります。よって在庫整理と利益率を上げるという一挙両得が可能となります。

飲み手側;驚きと興奮の体験が待っています!
ズバリ!飲み手に取ってジャストミートな味を作り出す事が出来ます。
飲んでしまえばいちいち説明する必要はありません。味わえば「これだ!これが欲しかったんだ!」と飲み手の合点がいく酒質を提案できます。
いちいち蔵の歴史やこだわり、そしてスペック等のうるさい説明をゴチャゴチャ聞く必要はもはや不要です。

以上、もういい加減文章が長くなってきましたので、ここらで切り上げるといたしましょう。

ただ単に長期熟成酒と言ってもその種類、生い立ちは様々でも、私が思うにその未来は非常に明るいと考えております。今後世界的に新たなマーケットが生まれるのではないか?ーつまりワインセラーで熟成させるという新しいムーブメントが海外から逆輸入現象が起こるのではないかという個人的な期待もまります。

そもそも私の一番の長期熟成の関心ごとは「いかにコレクターズ・アイテムになるか」ということ。私が2008年、酒造業界に入り駆け出しの頃、新宿伊勢丹で試飲販売会を行いました。
ワイン売り場と日本酒売り場を比較すると、日本酒売り場にはカゴ。一方ワイン売り場にはカートがありました。尋ねるとワイン売り場での一人の最高売り上げはなんと240万円だそうです。
その人はカートに高級ワインを一杯入れて購入されたそうです。
そうです。ワインセラーでコレクションできるからこそ、ワインは投資目的にもなるし、値が上がるのです。

長期熟成酒にはいままで日本酒が見落としてきた世界的マーケットの顧客にアクセスできる唯一の残されたチャンスかも知れません。
そしてそのチャンスにいち早く気づき、一番乗りした蔵がそこのスタンダードとなるのです。
世界は待ってます。扉は目の前です。
そしてその扉は見える人にしか見えません。
わたしははっきりと見えてます。

今回のテーマの最後に、
私にとっての理想の長期熟成酒とは、
『造り手=蔵元の"フィロソフィー"が熟成とともに昇華されている酒』で、
飲み手の魂を感動で揺さぶる"極み"に達した酒であること。


次回いよいよ中盤の第三回
「ガラパゴス化を回避せよ!若手蔵元は視野を広げる努力をせよ!」
です。お楽しみに!  

Posted by 勝山 at 02:18Comments(0)未来への提言

2014年11月04日

日本酒 未来への提言 第一回『脱 特定名称酒 論』

シリーズ第五回、日本酒 未来への提言
第一回『脱 特定名称酒 論』

これを読んでいる皆さんはたぶん特定名称酒と聞いてピンと来ることでしょうが、日本酒を口にしない約95%の日本人には全く異次元の世界でしょう。

ましてや、この特定名称酒のカテゴリー分けで、楽しい食事と日本酒のマリアージュをする際にどれほど役に立つでしょうか?

上記のピンと来る!方のほとんどが役に立たないと思っているのではないでしょうか。

また、ピンと来る!というかたのほとんどが一方で国酒と世界にPRすべきだ!と考えている割には世界の人々へ特定名称酒を説明できないのではないでしょうか?
特に香りの感じ方や味わいの違いなど、はたまた料理とのマリアージュでどれでけ外国の人に説明できるでしょうか?

さらに突っ込んで考えると、アルコール添加したお酒とアルコール無添加のお酒が特定名称酒では同列に語られていますが、世界の常識や税制からすると非常に異常な事態であることの認識をされている人が果たしてどれだけいることでしょう?

そしてこのアル添とアル添してない純米系のお酒の香り、味わい、楽しみ方、マリアージュの区別を、そして制度的内容の違い、歴史的事情等も合わせて世界の人に世界のワインラヴァーやあらゆる酒のマスターの方々に、この日本ではたして彼らの納得いくように説明できる人が何人いるか、心細い状況にあります。

なぜ私たちは、こんなに日本酒を実用的にも世界の人々にも説明できない、使い勝手の悪い名称呼称制度を使い続け無ければいかないのでしょうか?

そして特に問題なのが、この特定名称酒制度に切り替えて20数年となりますが、この20年間の日本酒の消費は下降の一途を辿り、一向にその歯止めが止まろうとしておりません。

確かに近年は輸出が好調と言われておりますが、大半の酒は安酒です。好調なのは日本料理店(特に外国人にオーナーのなんちゃって日本料理を語る安い店、稀に高級店も含むが)の世界的増加・出店等が主な理由であって、日本酒業界の取り組みが理由とは言えないことが重要です。
これはまるで日本における紹興酒と同じで、国内で中華料理店の数が増えれば相対的に紹興酒の出荷も増える、みたいな。
かと言って、紹興酒が日本国民に一般的に広く認識され普及しているかというとそうとはいえない。と同じ理屈です。

私が海外で非常に難しいと考えることは、日本国内においてマーケティング的にも、教育的にも失敗した特定名称酒ベースの普及活動とそのPR方法を、そっくりそのまま海外に持って行っても意味がないと言うこと。

世界中、何処に行っても特定名称酒制度のお陰でサケラヴァーや流通関係者等も皆混乱している。

つまり特定名称酒制度とそれをベースにした教育そのものが功を奏していないことに日本酒業界全体がいい加減気付くべき時期に来ていると思う。

では私が特定名称酒制度が要らないと思う幾つかの理由を説明します。

1)お米の生ジュースから日本酒は造られていない。ーという事実。
ワインは葡萄の生ジュースから出来てます。日本酒のように水を最終製品の70%近く入れるようなことはしません。

だからワインではその水分がくる土壌や気候、そしてその年の葡萄の出来に注目します。

前者が「テロワール」、後者がヴィンテージとなります。

「テロワール」には国によってその畑のクラスが法律で決めてあったり、そのテロワールで栽培されるべき葡萄品種の選定や葡萄の扱い方や醸造に到る作業工程にまで細かく規定されています。

ところが、でありますが、特定迷称酒は、お米の精米とアル添かアル添でないか(純米)の2次元的な分類しかない。

まず前者のお米の精米についてですが、特定名称酒では精米が高い方が、いかにも高く、高品質のようになっています。

ここで疑問が湧いてこない人は、日本人でありながら人生において“お米を炊いた経験の無い”人です。

一度でもお米をたいたことのある人、もしくは大切な人のために美味しいご飯を炊こうと努力した人でなら理解できると思いますが、

高くてブランド米を買ってきたからと言って、必ずしも最高に美味しいお米を食べれる保証がないことを知っているはずです。

たとえば、炊飯ジャーの性能、お米の正しい研ぎ方や炊き方、更に上級者には食事の目的にあった炊き具合の調整など、実はそう簡単なことでは無いこと位、心得ているはずです。

日本酒はワインのようにお米の生ジュースから発酵などさせませんし、そもそも出来ません。
丁寧に精米したお米をさらに温度調整し、仕込み水という地下水の温度に合わせてから洗米し、そのお米の使用する各プロセスに合わせた最適なお米の水分量確保のための浸漬を行い、水を切り、お米にヒビや欠けたりしないよう細心の注意を払い、正確に蒸し上げます。
この蒸しで失敗すると、それまでの努力が無駄になります。
そしてこの蒸す迄の作業=調理作業を経てから、日本の美しい軟水に蒸し米を溶かし、お米の甘味と旨味を水に吸収させていくのです。
これは日本料理の出汁を取る手順や内容とよく似ています。鰹や昆布からの雑味が出ないよう、細心の注意とタイミングを見計らい丁寧に旨味を水に移していく。つまり日本酒と日本料理はその製造プロセスにおいて同じであり、味の芯となり土台となるプロセスが一貫しているのは世界広しといえども日本くらいです。ついでに言うと此の大切なポイントを見落として申請した和食の世界遺産登録には個人的に非常に失望しています。

さて以上のように、酒もお米を炊くのと同じように、調理プロセスを経てからでないと本当に美味しいかどうか?ちゃんとそのクラスに到達しているかどうかが判らなのです。つまり調理前のお米の状態でのカテゴリー分けなど頭でっかちの机上の空論そのものです。
現に私も経験ありますが、酒米の2ランク格下の加工米でしかも70%の低精米の酒と、酒米で10%以下という非常に高い精米の酒のブラインド•テイスティングにおいて、満場一致で低精米の酒が圧倒的な支持を得ました。それ以降私の中で、精米歩合神話は終焉を迎えました。大切なのはスペックではない、造り手のセンスなんだ!と確信した瞬間でした。

上記の理由から精米歩合を前面に出すことに本質的な意味はないことがおわかり頂けたのではないのでしょうか?

個人的には精米歩合はあくまでも判断材料の一つであって、第一義的に来るものではないと言うことです。あくまでも飲んだ後に見る程度の「どうしてこういう味わいになったんだろう?」という謎解きのひとつのヒントにしかならない程度の物なのです。

ですので未だに精米歩合至上主義を掲げているようでは、いけません。
20年前ならいざ知らず、今や誰でも簡単に大吟醸が造れる技術革新が進んだ現代では精米歩合で自慢しているようでは、その蔵元のフィロソフィーが見えてきません。

日本酒は嗜好品なので、国産車のカタログのようなスペック至上主義では味気ないじゃないですか?
もっと造り手の意志や哲学に耳を傾けながら味わうような、そんな嗜みのシーンをより多く創っていくべきではないでしょうか?とつくづく思います。

次ぎに諸悪の根源、アル添/純米の同列表記です。

サケ・ラヴァーには申し訳ありませんが、世界のほぼ100%の醸造酒ファンは“ワイン”です。

一部の勝山ラヴァー以外は、日本酒という物はデイリーな安いアルコールではなく、ワインセラーに名だたるシャトーのワインとセラーで並べて保管し、ヴィンテージを楽しめるだけの崇高な嗜好品であることを知りません。

故に世界を牽引している高級酒を頂点とした醸造酒マーケットは"100%"ワインが独占しています。

その中において、アルコールを添加していないスティルワインが世界のスタンダードだとすると、アルコール添加したいわゆる「酒精強化ワイン」もしくはフォーティファイド・ワイン、いわゆるシェリーやポートワインですが、常識的にスティルワインとはカテゴリーや酒税・呼称制度が異なっています。

ということはアル添と純米ではその目的、背景、香りや味わいの基準も分けなくては、世界のスタンダードになれないこととなります。

だから世界的に見ても、アルコール全般から見た区分けや税制の区別、制度的区別にも全く即していないのです。

個人的にはアル添はまずその香りで判ります。香りの全体像が非常に不細工です。味わい、特に後味や戻り香において美しさが欠如しています。

たまには巧い造り手のアル添もありますが、一杯目以降飲み続けると直ぐにその馬脚が現れてしまい、結局飲み疲れしてしまいます。

では自分的にどうアル添酒を扱えばいいかというと、アル添はいっその事、世界基準に合わせて「酒精強化日本酒」と呼べばいい。“フォーティファイド・サケ”と海外で呼ぶのがいいのではないでしょうか?

そして思い切って、近年のワインも15度台と日本酒並みにアルコール度数を上げてきているので19-22度位の特徴のある酒を造ればいい。

ある意味、そうやって割り切った方が、消費者を熱狂させハマる酒を造れるかもしれない。

そしてフォーティファイド・サケの強みを活かし、高品質でありながら純米系では難しい常温流通・保管は当たり前で、しかも10年以上の常温長期熟成も出来る本格的な長期熟成酒を目指せばいい。

また直ぐ飲まなければ行けない酒は世界的にテーブルワイン、いわゆる安酒の類。ファイン フォーティファイド•サケとしてワインセラーで10年20年30年は熟成出来る酒質に仕立て上げれば、その地位は一気に上がり、コレクターの対象となって価格も上がり付加価値も上がることでしょう!

どうでしょうか?制度を見直そうとするだけで、日本酒の可能性が広がり、より世界のマーケットを相手にプレイできるようになるのです。

2010年頃を境に、日本酒の技術的進歩とその技術の応用と解釈にマーケットも多様性で応えられるように漸くなってきました。

よってこの先につづく造り手の活動の幅を商品開発でもって切り開くためには将来へ向けた制度改革は必要なことだと思います。

『脱 特定名称酒』

これは造り手、売り手、飲み手、日本酒を愛する全ての人の今後5年のキーワードとなることでしょう!

では全5回シリーズ、第一回はここで終了とさせて頂きます。

2回目は現在密かなブームとして認識が高まっている長期熟成酒にスポットを当てます。
第二回「長期熟成酒・マルチヴィンテージ・ブレンディド・サケで世界を制覇せよ!」お楽しみに!  

Posted by 勝山 at 18:33Comments(0)未来への提言