2013年11月26日

國酒の海外戦略考4 "特定名称酒呼称"不要論!?

國酒海外戦略考 その四は、ちょっと衝撃的な内容です。

"特定名称酒呼称"不要論!?

ここで質問です。

本醸造といってマリアージュするフランス料理のお皿を連想して下さい。

純米、吟醸、特別純米、純吟、、大吟、純米大吟・・と、この質問を続けて下さい。

また中華料理やイタリアンでも如何でしょうか?

そして更に質問です。

上記のそれぞれの理由を、フランス人、イタリアン人、中国人(香港人)に明確に特定名称種の差がわかるように説明できますか?

また、あなたの説明を聞いた外国の人々がその人たちの友人にあなたの説明を説明することが出来るでしょうか?

結論から言うと、特定名称酒から料理を連想し、フードペアリング(素人考えからプロまで)を連想させ、さらに実践させることは不可能です。

では別の角度からの質問です。

特定名称酒呼称は、例えば純米から純吟まではわりと細かく規定されております。が、純米大吟醸もしくは大吟醸はあまりにも大雑把な区分と言わざるを得ません。

一方で、近年"大吟醸もしくは純米大吟醸しか造っていません”という蔵もよく見かけるようになりました。そういえば一昔前は「純米酒専門蔵」でしたね。

よく考えて下さい。何か感じませんか?

つまり現在では大吟醸もしくは純米吟醸が普通に当たり前に造れる時代になったと言うことです。

特定名称酒呼称制度が始まる前の昭和の時代では想像すら出来なかったことですが、平成の現在では当たり前に誰でも大吟醸を作れる時代となりました。

ということは現状が大きく底上げされた結果、現在は制度が取り残されてしまったと言えます。

純米も吟醸香も、たったの20〜30年前迄は確かに難しい技術でした。でも昔では珍しかったものが今ではもう当たり前なのです。

そして若い世代の蔵元や酒販店に勤める若手の方々は、一昔前の吟醸香が有り難い!という感覚は全く持ち合わせておりません。

まるで、携帯が無い時代に青春を過ごした人と、iPadが子守歌の世代では「ありがたい!」という感覚に断崖絶壁ほどの差があります。

となると、新しい世代が海外に打って出る戦略と、今までの旧態依然の営業感覚での海外戦略では、全く違う手法を執って然るべきであります。

上記を整理しますと:
1)特定名称酒呼称ではフードペアリングを連想できない
2)現在の若手は吟醸香も純米特化も当たり前に出来るので、20数年前の特定名称酒呼称制度制定前と現在の技術が格段に違い、制度が自体が陳腐化した。

実際海外でのPRにおいて、世界の関心は日本酒自体の香り・味といった単体での評価よりも、むしろフードペアリングの方に向いております。

つまりこういう事です。2000年以降、ニューワールドのワインも含め、世界中ではあらゆる新興国が復興、一方でワインのスペック・価格等も含めた多様化が進められ、一方で各国のガストロノミーも一気に繋がり、世界中がワインに征服されてしまった事実があるということです。

つまり、日本酒はワイン学によって判断され、香りも味もワインの感覚を持って評価されるものとなってしまいした。
これは酒全般でのテイスティングの主流を完全にワインが世界を制した!ことに起因します。
なので、日本酒は世界の酒の愛好家へPRし、確実にファンを増やし販売を確固たるものとする為には、以下の事に留意すべきです。

1)ワインベースのテイスティングに対しての準備。
2)愛好家もしくは消費者(日本でも)は一般的に既にワインで満足しているし、まだまだワインへの興味が尽きない。そしてマリアージュはワインでこそ行われるべきだと思って疑わない。
3)日本酒愛好家はハッキリ言って超マイナーな存在である。ことの認識。
4)ここが重要で、世界の酒のメディアはワインが主流であり、一般消費者へも影響力が絶大です。それに比べ日本酒の愛好家の存在とメディアへの影響力は非常に微力であり、特にガストロノミー界への影響力もまた微力であることを前提としなくてはならない。また高級レストラン常連のジェットセッター等の人への情報影響力は皆無と言っていいかも知れません。

いろいろ問題を指摘いたしましたが、結論としてワインベースで情報が伝達する土壌が世界に形成されている以上、
醸造の現場と制度的乖離が著しく開き、海外PRの最前線で「特定名称酒呼称制度」は混乱を招くだけで、百害あって一利無しの不要の長物となっている現状を認識すべき時に来ました。
ただし、大手の酒をPR・販売する、もしくはアルコール添加の強力な支持者以外は旧態依然で一向に問題はありませんが・・・・・

ここで注目すべきポイントがあります。
海外の人の関心は日本酒の評価よりも、テーブルの上でそれがもたらす"喜び"へのほうにより強い関心を見いだすと言うことです。

つまり一般の愛好家はテイスティングはワインで十分すぎるほど満足しております。
そんな中で日本酒を飲んでも、やはり葡萄と米という原料の持つ香りと味・酸味の違いからくるインパクトの差はどうしようもありません。
原料の違いはいわばスタートラインが違うことを意味しております。
100m走でお米がが0mのスタートラインとすると、ワインは50m地点からの有利なスタートとなります。
「フルーティーで美味しい」というのはよく誰でも使う表現です。つまりワインは葡萄からなので非常に有利です。
しかも日本酒には色の違いがあまりない。ここら辺も外国人が日本酒の違いを認識しづらい原因のひとつです。

よく海外で見る光景ですが、JETROや中央会主導の海外展開においていろいろとセミナーを行い、その中で3〜5種類くらいの日本酒のテイスティングを行なってます。
特定名称別にテイスティングするのですが、主催者側は人が集まれば満足ですが、実際セミナーに参加した外国人の殆どは特定名称別の違いを全くと言ってよいほど理解しておりません。つまりセミナー後の満足はかなり低いと言うこととなります・

ここで更に言いますと、特定名称酒の区別では外国人はその違いを識別できない、もしくは識別が日本人が思っているほど容易ではない、ということ認識し、前提にすべきでしょう。その上で、よりよい認識のために策を考え出す必要があります。

またセミナーにおいてもその酒のセレクションに問題があります。
ワインと異なり、日本酒はお米なので、ブドウ品種ほどの差が出にくいという性質があります。
また一方で、葡萄の出来や出自がそのワインの出来と格を決定する第一の要素なのに対して、日本酒は蔵元の酒に対する哲学と杜氏の技術が最優先する酒。
つまり、生産者次第で、精米歩合、米の種類を通り越し、蔵によって酒質の違いが大きく出やすいのです。
ですので、海外でのセミナーもこの重要なポイントを押さえ、そして提供する酒の蔵のレベルを合わせないと、精米歩合と米の種類の違い、更にはその結果として出来た特定名称呼称別の酒の違いを外国人に明確に説明できないのです。

またよく海外でのセミナーでの特に大きな"ミス"を指摘しますと、フードペアリングにおける完璧なミスリードです。
まず、特定名称酒別にお酒のマッチングを進めることがよくありますね。
理解できなくはありませんが、そもそも純米系とアルコール添加系が同列になっている特定名称ではワインで言う所のスティルワイン(通常のワイン)とフォーティファイド(酒精強化ワイン)が同格・同列で料理にリコメンドされるという、ワインラヴァーからは理解しがたい状況になってしまいます。

また、特定名称では酒の「品格」「美しさ」といった「格の違い」は全く説明しておりませんし、そもそも制度導入時から意識されたことなどありませんでした。
つまりワインで言う所の「クラス分け=格の違い」が全く説明されておりません。
ワインでのフードペアリングでの重要な決め事として1)同じ地方性、2)同じ"格"/クラスに合わせるといういものがありますが、
特定名称ではそのどちらも意識されてないという問題があります。
海外での日本酒の講演でも、この事が全く意識されていないために、まるで日本酒には格/クラスの違いが存在しないようなフードペアリングの説明やミスリードをよく目にします。
ワインでもそうですが、そもそも高級な料理にテーブルワインなど出すわけがありません。しかもグランヴァンから先に出し、〆ちかくはテーブルワインで云々という、へんなミスリードが氾濫してしまうような状況を招いてしまいました。

ハッキリ申し上げますが、日本酒にもワインと肩を並べる、またはそれ以上の(別の視点での)品格の違い、クラスの違いが存在します。
しかもそれはワインよりも絶対的なものであることも、ここで申し上げておきます。
参考までに、勝山ではこれから述べる以下の4つのカテゴリーがあり、それぞれのカテゴリーの中で値段が一番安いのがそのカテゴリーのスタンダードなお酒となり、順を追って次第に値段が高くなっております。スタンダードと最高級酒ではそのカテゴリー内において最高で20倍の金額の"差"がございます。
これが日本酒の品格、つまりクラスの違いです。
日本酒では、ダイヤモンドを鑑賞するような、繊細で精緻、絶対的な"美"意識というものが存在します。
だから特定名称レベルでの大吟醸と普通酒が、高級料理に並列で並べられるようなフードペアリングなどはあってはならないのです。
フランス人のV.I.Pに出したら、圧倒的にフランス料理文化から見下され、笑われてしまいそうですね。
でも、本気の日本酒フードペアリングの底力を知れば、フランス人も重い腰を上げなければならない事態を知ることでしょう。

これだけ書くと、では実際どうしているのか?と言われますので、簡単に勝山での海外でのPRをご紹介させていただきます。
1)テロワールに言及する。
 ワイン学を学んでいる世界中の酒全般の愛好家に絶対に真っ先に押さえておきたいポイントです。
 日本はズバリ「美しい軟水の国」であり、その軟水によって世界中で類い希なる美味な日本米を長い歴史の中で育んできた「水穂の国」であることを説明します。

2)軟水をベースとした4カテゴリーを説明し、そのコンセプト/製法(軟水とお米にフォーカスした簡単解説)をその国の言葉でわかりやすく説明します。
 勝山では今年の海外PRから特定名称呼称ベースでの説明を止め、以下の4種類での説明を行って参りました。
① Pure Light Body
② Pure Medium Body
③ UMAMI Full Body
④ Sweet Rich Body
 非常にわかりやすく、製法の違いも理解していただき、どこでも大好評です。
 とくにテイスティングで一番の問題であった「差がわかりづらい」という問題が一気に解消です。
 詳しくは後日のブログで詳細を解説させていただきます。

3)テイスティング
 基本的にワインのテイスティングをベースにしておりますが、ワインと國酒では観るべきポイントが異なります。
 観る手順、そして感じ取るポイントを説明し、造りが丁寧でしっかりしているか、または造りが適当であるかの判断基準を教えます。
 またフードペアリングにも通じる大切な口内での味のまとまり、喉越し、戻り香の重要性も理解していただきます。
 上記の4種類の順で、またひとつのカテゴリー内ではスタンダードからはじまり高級酒へとバーティカル(垂直)テイスティングを行います。
 そこで横の4種の酒質のコンセプトの違いと、縦の品格の違いで日本酒の立体的なラインナップを理解していただきます。

4)フードペアリング
 ここが決め手です!日本酒はテイスティングで造りの良し悪しと大方のフードペアリングの方向性は理解できますが、それでもその酒の30%程のポテンシャルしか理解できません。
 國酒の神髄を100%理解するには、のこり70%をこのフードペアリングで確認します。というか、大いなる発見となります!
 そしてここが重要ですが、フランス・ガストロノミーをはじめ、超がつくワインコレクターが日本酒に振り向くのはこのフードペアリング時です。
 つまりこのフードペアリングをおいて、國酒の威力を海外に発信する最高のツールは無いと言うことです!
 そして上記の4種類のカテゴリーは、それを説明するもしくは料理と合わせるときの最高にわかりやすい"指標"となります。
 次回以降に詳しく書きますが、実は「お米の甘さ」をどう説明するか!が、フードペアリングで一番の山場となります。
 これに成功すると、今までのワインでマリアージュ原理主義者は、甘味ベースの日本酒フードペアリングにその場で改宗します。スゴイ展開となります!!

海外戦略での重要な要となるフードペアリングは、私の著書「MODERN酒道」「モダン酒道」に言及しておりますので、そちらに詳しく書いております。
本を書き上げたのが2〜1年前ですが、上記の4ラインナップに辿り着くための基本的な醸造コンセプトとフードペアリング理論の基礎が論理立てて説明されております。
國酒 勝山酒造の本HP → http://www.katsu-yama.com/products/index.html#shuppan

若手蔵元の方々には、特定名称呼称は全てではなく、ましてや鑑評会用のフードペアリング不可能な酒の範疇から飛び出し、海外でこそフードペアリングを最大限に発揮し、日本の旗をガストロノミー界に掲げられるような素晴らしい酒を目指して頂きたいし、またそれを酒販店をはじめ日本酒愛好家の方々にも応援していただきたいと願う次第で御座います。
以上。


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