2013年12月11日

國酒の海外戦略考5 2013年総括編

國酒の海外戦略考 其の5は2013年で私が海外で感じた総括編です。

まず、海外戦略で絶対外せないのが"チーム造り"です。
このチームがない以上、蔵元は海外に行ってはいけません。ただ海外視察旅行ならいいですが、
ヘタにブース出店やプロモーションを行ったとしても自己満足で終わってしまい、絶対と言っていいほど次ぎに繋がりません。

1)"必ず次ぎに繋がる"ためのチーム造りをご説明します。
まず事前に選定する必要があるのが
・日本側の輸出業者
・相手国側の輸入販売業者
の二つです。

・日本側輸出業者との関係造り
   取引前に蔵に最低2回は通い毎年1回は最低通わせる。
   蔵元の理念、理想、酒質コンセプト、酒の取扱、酒の飲ませ方、販売戦略、価格戦略の共有。
   酒の管理体制
   輸入業者に対しての対応の一切について常に情報共有・対応・対策ができる体制作り
   素早い対応と細かい対応が出来る関係造り

・輸出先側輸入業者兼卸/販売会社の選定条件
   ・冷蔵設備と冷蔵配送設備の有無の確認
   ・地元営業スタッフの営業展開状況とスキル、業者とのグリップの深さの確認
   ・優良顧客(個人/法人)リストの有無
   ・地元の有力者/有力企業グループとのパイプの有無
     飲食店・酒業界のキーパーソンとの横と縦のつながり
     地元を牽引している有名店とのパイプ
     地元有力財界人、有名人とのパイプ
     ※今年はでデビット・ベッカム氏と妻のヴィクトリア氏にダイヤモンド暁と暁を飲んで頂きました。
      → http://shozankan.da-te.jp/e579432.html
     その他有力地元ワインクラブ等、ワイン関係者とのつながり

   ・地元有力マスコミとのパイプ
     パブリックリレーション能力があり、情報発信力があるかどうか?プレス関係者をどれだけ集められるか?
     →蔵や輸入業者が広めたい情報をマスコミにPRするだけの力があるかどうかが鍵。
     →勝山では今年は以下に掲載されました。
    ※どの国に行っても同じですが、そこの国のジャーナリストの視点でいかに"書きたくなる、紹介したくなる情報・トレンド"を提供出来るか!?がマスコミに登場する一番の鍵だと確信しております。
    ・12月シンガポール有力紙新聞 日曜版
     THE STRAIT TIMES / THE SUNDAY TIMES
     http://shozankan.da-te.jp/e639540.html
    ・11-12月香港有力新聞+ワイン専門誌2誌
     Apple Daily
     http://hk.apple.nextmedia.com/financeestate/art/20131212/18547434
     WINE TIMES
     http://winetimeshk.com/%e4%b8%80%e7%9d%b9-katsuyama-sake-%e5%8b%9d%e5%b1%b1-%e6%b8%85%e9%85%92%e4%b9%8b%e6%99%82%e5%b0%9a%e9%85%92%e9%81%93/
     Cup Magazine’s wine supplement: 2 pages
    ・8月メキシコの有力紙新聞
     REFORMA
     http://shozankan.da-te.jp/e588898.html
    ・7月フランスのグルメ専門ネット新聞
     TERROIRES DE CHEFS
     http://shozankan.da-te.jp/e580149.html
    ・4月フランスにて酒紀行小説"Sakes"に"J"として文中・写真に登場
     http://shozankan.da-te.jp/e558044.html
    また、現在シンガポール向けケーブルテレビの撮影が入っております。

2)販売戦略についてご説明します。
ここでは主に"ブランド化"についてお話しします。

ブランド化と価格戦略は非常に密接に繋がっております。

勝山の場合、レギュラー商品と高級酒の二本柱ですが、基本的にはブランド構築を優先する場合、やはり高級酒を前面に押し出すようにします。
つまり、超高級酒を押すことで、レギュラー版は自然に導入されるようになるので特段レギュラー版(普及版)の為のプロモーションは行う必要がないからです。

ただここで注意をする必要があります。どれ位の期間をかけるか!これを予め定めてないと大変なことになります。
そのために事前、ブランド展開開始時期、途中経過で輸出・輸入側双方との綿密な対話と戦略が必要となります。

やはりブランド戦略を行うためには3〜5年のスパンという中長期的視点が必要となるため、蔵元もただ出荷して終わりというような国内同様に簡単に考えてはいけません。
最終的に顧客に酒がどのような状況下で、また顧客がどれだけの期待感をもって手に入れ、飲んでいるかまで、輸出・輸入業者と話し合っていなければなりません。ある意味、とっても辛抱しなくてはならない状況が長く続きます。焦りは禁物です。

販売ルート関して、まず以下の選択肢があります。
1)小売優先:地元百貨店・スーパー等の店頭で売る場合。もしくは地元ワイン店でおかれる場合もあります。
2)料飲店専門優先:小売をせず、料飲店に特化し、限定感をマーケットで演出。また取引して頂く店舗にも限定感があり売りやすくなる。
3)優良個人顧客販売優先:年間数千万円購入する優良顧客向けの販売です。超得意客限定販売のようなかんじでしょうか。
4)上記のミックス;"1+2"または"2+3"

ここで海外特有の販売ルートによる問題点をいくつか上げておきます。
まず、その国のレストランでの酒の販売方法を確認します。
たとえば、香港やシンガポールでは持込が多いという習慣があります。

このような場合、小売や個人販売とレストラン両方で売ると、安い小売で購入し店に持込む。店の売上げがさっぱり上がらなくなる。といったような問題が日常で当たり前に出てきます。このような状況が続くとお店は酒の販売意欲を削がれていき、深刻な問題となります。
この場合、ブランド優先にするのであれば、レストラン優先、しかも高級店舗のみと非常に限定をかけ、"レア感"を演出します。
そうしながらコアなファンを着実に作っていきます。

香港やシンガポールのような小さな街では情報の行き来が早いので、ある意味1年〜2年でブランドの定着が可能かもしれません。
その次は限定的に優良顧客のみへの販売となり、富裕層向けの完全定着を狙います。3年から5年はかかるでしょうか。

そして小売は・・・・・・これはブランド化では非常に難しい問題です。よほどの事がなければやらない方が得策と言えます。
よく、直ぐに棚において貰いたい蔵元も多いのも確かですが、棚に並べるのをゴールと思ってはいけません。ここからが勝負の始まりです。
特に小売の場合ではタダ陳列するだけでは差別化できませんので、専用の冷蔵庫や専用の装飾をした棚に入れなければならないでしょう。

たしかに輸出国の輸入販売業者がどの販売ルートや販売展開が得意か事前に販売現場と保管冷蔵庫等も確認し、販売ルートとその戦略をしっかりと立てておくことをお進めします。途中からの戦略・戦術の変更はなかなか出来ませんのでご注意を。

上記のように、輸出業者ならびに輸入販売業者選定、ブランド戦略は非常に時間と労力がかかるものと言えます。
ですので、日本酒の輸出を他人任せにするような蔵元の酒は今後伸びるのは難しいと言えるでしょう。
やはり蔵元が先頭に立ち、各国の事情、業者との折衝、要人のとの関係造り、PR・イベント活動を積極的にこなしていかなければ一点突破できない時代だと確信しております。
蔵元の資質についての詳細は以下のブログを参考にして下さい。
基本的にはプレゼン能力、つまり伝播力が全ての鍵となってきます。「蔵元杜氏」は国内販売では十分ですが、海外では「プレゼンに強い蔵元」が今後より重要となってくることでしょう。
・蔵元の資質1→ http://shozankan.da-te.jp/e629156.html
・蔵元の資質2→ http://shozankan.da-te.jp/e630339.html

3)蔵元ツーリズムへの苦言  
最近何かと話題の蔵元ツーリズムです。
基本的にはいいアイディアだと思いますが、蔵元の視点から以下の大切なことが欠けている!と思います。

①蔵元としては、雑菌の侵入(人の侵入)は基本的に快く思いません。
 でも、それでも納得して受け入れできる売上(うれしい金額!)があればOKデス。やはり売上が蔵の元気の原動力となります。そうすることで毎回蔵元納得の上で、蔵元に負担を強いらない形で継続的な蔵元ツーリズムを推進することが可能となります。

②その地域の観光地の一部として海外の客が来るのは正直蔵元にとっては別にどうでもいいことです。
 むしろ海外からわざわざその蔵目指して来てくれるような仕掛を海外で行い、それに呼応する形での見学・訪問があるのが理想でしょう。
 つまり海外で行われるイベントで興味を持った外国人が、その蔵をわざわざ訪ねに来るというような図式でなければ双方実りある結果を出したとは言えません。

①については、形だけの蔵元ツーリズムは蔵元にとって全く必要ないと言うことです。
名目上の為に、タダでさえ忙しいのに、いちいち身元・目的が不確定な外人(礼儀知らずで不謹慎な観光客も含む)なんていちいち相手にはしてられません。ということが正直なところです。
ただ単に物珍しさの観光客など相手にする気は毛頭ありませんし、正直時間の無駄です。
その蔵に興味を持ち、取引を念頭にしての見学、もしくは影響力のあるシェフやソムリエや海外の取材など話題となるような企画ならば話は別です。こちらも本腰を入れて対応させて頂きます。しかし不特定多数だと、毎回どのレベルで、どこまで魅せるのか判らず、振り回されるのがオチです。
今後継続的なことを考えると、やはりしっかりと蔵元へお金が落ちる仕組みが必要となってきます。しかしながら現在はそのような仕組み造りまでは全く考慮されておりません。
旅行代理店、広告代理店、近隣温泉宿や料飲店、おみやげ屋さん等にお金が落ちるのであって、直接的に蔵元にはお金が落ちる仕組みが見えてこないのが非常に問題です。これだと一時的にはいいでしょうが、毎回だと蔵元のモチベーションは下がる一方です。

②まず、海外での日本酒PR活動が、最終的に日本へ観光させる為のPRに全く繋がっていないこと自体に憂慮します。
 ただたんに海外での予算消化、ただやりました、花火を上げました的なイベントが多いのに非常に疑問を感じます。
 酒のなんたるかを知らない企画会社に丸投げし、その後の輸出に繋がったかどうかの検証も評価も一切行わず、毎回効果のない同じ企画を繰り返すだけでは一向に進歩・発展が望めません。
 またそれ相当の予算を使っているにもかかわらず一向に地元のメディアにすら載らないし話題にならないようなことが多いのも問題です。
 マスコミ対策も無いということは、はじめから観光誘致活動を念頭にしていないことの裏返しです。

 ちなみに勝山の海外イベントでは後に必ずといってその地の外国人が蔵に見学に来ます。そして輸出額も順調に伸びておりまます。
 勝山に蔵見学に来る外国人は、勝山に来ると何が観れ、何が体験できるかを訪問する前からわかっておりますし、日本酒をより確実に理解できるよう、日本酒のテロワールの原点である山からスタートし、水を追って畑、そして蔵までの「水の流れを追う」見学ルートが確立されており、とても好評を得ております。また見学の最後にはフードペアリング基本講座「モダン酒道エクササイズ」にて日本酒の食中での威力をシャンパンやワイン、ビールなどと比較して頂きながらしっかりと体験して貰います。

 つまり、日本酒のなんたるかをしっかり理解して貰うために、何を魅せるか、何を体験させるかまでしっかり掘り下げて準備を行わないと、ただ単に見学した〜ぐらいでは一向に日本酒の理解・啓蒙活動は出来ません。そこらへんをあまりにも簡単に捉えているのが、現在の蔵元ツーリズムの取組だと思うと非常に残念でなりません。

 食事だってタダ単に世界遺産登録された和食でOKなどと安直に考えられても困ります。
日本酒のサービス自体も旧態依然からさっぱり改善されていないのに、いくら食事が世界遺産だからと言っても、日本酒を感動させるには至りません。世界遺産の和食体験でOKと思っている人は、飲食店の本質を全く理解していない人たちの考えです。
なぜなら「食と酒は両輪」です。
同じ世界遺産登録されたフランス料理では基本中の基本です。当たり前のことです。そんな基本的なことさえわかっていない人たちが企画している。いくら世界遺産の和食といっても、"食と酒は両輪"ということを押さえていないそんなお粗末な"おもてなし"はNGです。
 いくら素晴らしいお酒があってもそれを出すサービススタッフの器量、器、雰囲気、フードペアリング等、煮詰めるべきポイントは多岐にわたり、世界遺産という言葉で全てをくくって貰っては身も蓋もありません。
 
現在、勝山では来年に向けて、これが理想の蔵元ツーリズムというものを独自に創り上げております。まずはチーム作りが大切ですので、準備には時間とそれ相当の段取りに時間と労力がかかるでしょうが、確実に蔵元ツーリズムに一石を投じることとなるような結果を出せることと確信しております。

以上、2013年海外から投稿した最後のブログとなります。


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國酒の海外戦略考5 2013年総括編
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